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Blowin’ in the Wind~風に吹かれて 風力発電 徹底解説3BY ALLEN HUANG

風力発電の課題:設置環境の制約

化石燃料に比べてCO2排出量を抑えることができる風力発電となります、いくつかの課題もあります。

まず、一般家庭で風力発電を目にすることはほとんどありませんが、それには理由があります。商用風力発電の建設には約260万~400万ドル、運用と管理には4万ドル以上かかりますが、建設して設置するには25~40エーカー(1エーカーはおおよそサッカーグランド1面に相当)の土地が必要で、住宅に設置するのはほぼ不可能です。住宅用風力発電は存在しますが、小型風力発電の設置コストは5キロワットシステムで15,000ドルから、より大型の15キロワットシステムでは175,000ドル以上と幅広く、10キロワットの太陽光パネル設置の平均コスト27,300ドルを大幅に上回ります。設置スペース、厳格な許認可、継続的なメンテナンス費用などにより、一般住宅で風力発電を設置することは現実的ではありません。その結果、太陽光発電は、大多数の家庭にとって、より利用しやすく手頃な価格の再生可能エネルギーの選択肢となっています。

風力発電のもう一つの大きな懸念に騒音問題があげられます。回転するブレードは空気力学的騒音と機械的騒音の両方が発生し、近隣地域に迷惑をかける可能性があります。特に低周波騒音は睡眠障害などの健康被害につながる可能性があります。

これらの懸念に対処するため、風力発電のメーカーや運用企業は、タービンの改善、ギアボックスの静音化、ブレードの改良などを通じて騒音の低減に継続的に取り組んでいます。さらに、規制やガイドラインでは、騒音への影響を最小限に抑え、騒音レベルを許容範囲内に抑えるために、住宅地から十分な距離を置いて風力発電所を設置することが求められています。

風力発電の課題:鳥類に与える影響

風力発電は、野生生物、特に鳥類への影響が課題としてあげられます。つまり、鳥類が風力発電のブレードとの衝突事故です。また、渡り鳥の経路が乱れる可能性についても懸念されています。2013年~2014年に発表された複数の研究では、米国では風力発電のブレードとの衝突により毎年14万~67万9千羽の鳥が死亡していると推定されています。この数字は近年、風力発電所の建設が増えたため、拡大していることが予想されます。また、洋上風力発電所でも、建設時の杭打ちの騒音が魚類や海洋哺乳類などの敏感な種に影響を与えるなど、海洋生物への影響も懸念されている。

こうしたリスクを軽減するため、一部の地域では、風力発電付近の鳥類を検知してタービンを一時的に停止する鳥類レーダーシステムなどの対策が実施されています。しかし、風力タービンが鳥の個体数に及ぼす全体的な影響は、生息地の破壊や建物や車両との衝突など、他の人間の活動に比べて一般的に低いと考えられています。実際に、ペットの猫によって亡くなる鳥の数は、風力発電よりも多いとの調査結果もあります。

また、多くの風力発電では、生きものに配慮して風力発電を設置したり、鳥に優しいタービン設計をしたり、建設前に環境アセスメントを実施して主要な渡り鳥のルートを避けたりするなど、鳥との衝突を最小限に抑える対策を実施しています。 その1つの手法に、ブレードの1つを黒く塗装し、視認性が向上することがあげられます。黒色は空や周囲の環境に対して強い視覚的コントラストを生み、特に鳥の活動が活発になる夜明けや夕暮れ時などでもブレードが見つけやすくなり、回避できることになります。これは鳥との衝突事故を避ける単純な方法の一つとなりますが、効果的な手法と言われています。

風力発電の課題:プラスチック問題

風力発電は、主にブレードの製造に大量のプラスチックを使用しています。具体的にはエポキシ樹脂またはポリエステル樹脂とグラスファイバーまたはカーボンファイバーを組み合わせた複合材料で作られています。これらの複合材は、軽量かつ強度があり、ブレードの効率性と耐久性を実現するには不可欠なものとなります。また、ブレードは、風を効率的に捕らえ表面を滑らかにする必要性があること、また、強風や紫外線などの厳しい環境条件にも耐えるため、こうした観点からもプラスチックを使用した複合材は重要な役割を果たします。

しかし、プラスチックの使用は、役割を終えたブレードの廃棄とリサイクルの過程において、環境上の懸念を引き起こします。リサイクル方法を改善し、将来の風力発電ブレード用に、よりサステナブルな素材の開発が進められています。

具体的には、化石燃料由来の原材料から、亜麻や麻などの天然繊維と植物由来の樹脂を組み合わせたバイオマス由来の複合材からブレードの開発が進められています。また、ブレードの素材として、リサイクルプラスチックの採用も進められています。

風力発電の導入拡大に向けて

再生可能エネルギーの導入がグローバルで加速する中、風力発電はよりクリーンで持続可能な未来をつくる上で、とても重要な役割を担っています。また、前述の通り、風力発電は、騒音や野生生物への影響、原材料や廃棄、リサイクルなどの課題がありますが、タービンや蓄電池などの技術革新は、有望な解決策を導き出すことになります。

風の力を活用し、その可能性を受け入れることは、未来への扉を開く鍵となります。風力発電が生み出す再生可能エネルギーを選択することで、持続可能な未来への道筋が開けるでしょう。